2013年7月24日水曜日

TPP ISD条項とは

 このISD条項は、米国とカナダとメキシコの自由貿易協定であるNAFTA(北米自由貿易協定)において導入された。 たとえばカナダでは、ある神経性物質の燃料への使用を禁止していた。同様の規制は、ヨーロッパや米国のほとんどの州にある。ところが、米国のある燃料企業が、この規制で不利益を被ったとして、ISD条項に基づいてカナダ政府を訴えた。そして審査の結果、カナダ政府は敗訴し、巨額の賠償金を支払った上、この規制を撤廃せざるを得なくなった。  また、ある米国の廃棄物処理業者が、カナダで処理をした廃棄物(PCB)を米国国内に輸送してリサイクルする計画を立てたところ、カナダ政府は環境上の理由から米国への廃棄物の輸出を一定期間禁止した。これに対し、米国の廃棄物処理業者はISD条項に従ってカナダ政府を提訴し、カナダ政府は823万ドルの賠償を支払わなければならなくなった。  メキシコでは、地方自治体がある米国企業による有害物質の埋め立て計画の危険性を考慮して、その許可を取り消した。すると、この米国企業はメキシコ政府を訴え、1670万ドルの賠償金を獲得することに成功したのである。
ISD条項とは
外国の投資家や企業が、進出国において相手国政府の法律や行政上の不備等で損害を被った場合、協定に基づいて相手国政府に対する損害賠償を国際仲介機関に訴えることができる、という条項。ISDはInvestor-State Dispute Settlement(投資家対国家間の紛争)の略。ISDS条項ともいわれる。国家間で投資協定などを結ぶ際、ISD条項を含んだ形にすることが主流になっている。日本も例外ではなく、1978年(昭和53)の日本エジプト投資協定以降、ほぼすべての投資協定にISD条項を入れ、進出国における日系企業の保護を図っている。なお、政府に瑕疵(かし)があったかどうかの判断は、世界銀行の投資紛争解決国際センター(ICSID:International Centre for Settlement of Investment Disputes)や国連国際商取引法委員会(UNICITRAL:United Nations Commission on International Trade Law)の定めたルールにしたがって行われる。