2013年2月26日火曜日

CREATION IN THE CITY まちでつくるビル 岐阜


古いビルの空きスペースに創造的な仕事を志す人たちに入居してもらい、地元商店街の活性化にもつなげようという試みが、岐阜市美殿町で進んでいる。昨年12月から入居を募ったところ、若手の建築設計士やデザイナー、注文服作りの職人ら5人が手を挙げた。4月から、この新天地で仕事を始める。

 美殿町は岐阜市中心部にある。柳ケ瀬の東側に長良橋通りを挟んで位置し、「東柳ケ瀬」とも呼ばれる。和菓子や家具、茶道具、漬物などを売る創業100年前後の老舗が軒を連ねる。 

 この事業は「CREATION IN THE CITY まちでつくるビル」。美殿町商店街振興組合と岐阜市にぎわいまち公社が手を組んで始めた。風情ある中心街の古いビルに新しい「創業者」を呼び込み、街に新風を吹かせるのがねらいだ。ビルの1階は飲食店などにし、入居者の作品を発表できるようにすることを想定している。 

 先例としては、米ニューヨークの倉庫街「ソーホー」や、名古屋市の繊維問屋街「長者町」が知られる。柳ケ瀬では、古いビルをクラフト作家らにスペース貸しする「やながせ倉庫」がある。 

 今回入居を募っているのは、築46年の「太田ビル」(5階建て)の1~4階の一部(計約340平方メートル)。入居スペースは1階が1区画、ほかの階が2~3区画の計9区画。家賃は、1階(71平方メートル)が月9万円で、2階以上の1区画(平均34平方メートル)は月2万~3万円に抑えている。

 太田ビルでは今月、入居希望者と振興組合、公社の人たち15人がワークショップを開いた。プロからペンキの塗り方などを学びながら、一部の区画を共同作業で改装した。家主側は電気工事や水回りを整え、改装費の一部も負担するという。


振興組合代表理事で家主の家具店経営鷲見浩一さん(52)は「貸すスペースは家具の展示場だったところ。8年間空いていたが、再活用できてよかった」。

 市にぎわいまち公社は「柳ケ瀬と周辺には古いビルがいくつもある。事業を広げ、発想を変えた街づくりを模索していきたい」としている。

2013年2月19日火曜日

郵便ポストに海抜表示板



郵便ポストに海抜表示板を張ったり、いざというときに郵便局を情報拠点にしたりすることを盛り込んだ災害時相互応援協定を、加賀市と日本郵便が18日結んだ。市がつくる海抜表示板は、はがき大で、簡易局を含む18郵便局と市内100カ所のポストに掲示する。

 加賀市は東日本大震災後の津波被害の見直しで、浸水被害が従来の想定を大きく上回る恐れが指摘され、沿岸部の電柱260地点に海抜表示プレートを設置するなど、対策を急いでいる。

 協定の内容は、海抜表示板のほか、災害時の緊急車両の相互提供▽避難所や避難者リスト、道路状況の情報交換▽郵便局での災害時情報ステーション開設――など。

 市によると、行政が作製した海抜表示板をポストに設置するのは全国初。郵便局に情報ステーションを開設するのは県内初の試みで、災害時優先電話がある郵便局に情報基地の機能を担ってもらう。

 協定締結後、市役所前のポストに第1号の海抜表示板を張った寺前秀一市長は「津波対策は市民の間で課題になっているので、協力は大変ありがたい」。市内18局の代表を務める表谷直樹・加賀松が丘郵便局長は「津波の避難ルートを考える参考にしてほしい」と話した。

2013年2月5日火曜日

大津市いじめ対策推進室


大津市で2011年10月、市立中学2年の男子生徒(当時13)が自殺した問題を受け、越直美市長は4日の定例会見で、いじめ対策のために新年度からの設置を予定している「いじめ対策推進室」に、弁護士や臨床心理士ら外部の専門員を配置する意向を示した。

 いじめ対策をめぐっては、市議会が2月定例会での制定を目指す「いじめ防止条例」の素案で、いじめの相談に速やかに対応できる体制整備を市に求めている。市は条例が制定され次第、新年度から市長部局に推進室を設置する方向で準備を進めている。 

 専門員は、子どもからの相談を直接受け付けるほか、いじめに関する基礎的な調査を担い、必要に応じて第三者機関への橋渡しを行うことを想定。越市長は専門員について、「学校とは違う観点を採り入れたい」とし、教員経験者は含まず、弁護士や臨床心理士、学識経験者を複数配置する意向を示した。また、推進室に警察官の派遣を受ける方針も示した。



 条例案ではこのほか、外部委員による第三者調査委員会の常設も求めており、越市長は「今後人選などを検討したい」と話した。

2013年2月4日月曜日

鳥取市議会、庁舎整備について説明会


鳥取市庁舎の整備を巡るこれまでの議論を市民に伝えようと、市議会が2日、初めての説明会を開いた。市内2カ所の会場に集まった市民は計約200人。住民投票後も混乱が続くことに、市民からは批判的な声が相次いだ。説明会は3日にも3会場である。

 この日の会場は、国府町と気高町。昨年5月の住民投票後に、耐震改修案を検証した特別委員会の議員らが中心となって説明した。 

 結果として、約20億8千万円の耐震改修案を「実現できない」と結論づけたことを報告。案に近い形で改修をする場合、土壌から出たヒ素への対策費などを含め総額43億4千万円かかることを説明した。さらに、工事費を概算した業者からは「同じような費用で現地新築できる可能性もある」と指摘されたことも伝えた。

 国府町の会場に集まった約150人の市民からは、「住民投票の結果が出てから案を検証するとは何事だ」「混乱を招いたのは議会」「こんな体たらくだったら議員はいらない」と批判が噴出。「市民は新築移転に『ノー』を選んだ。そこに立ち返って進めて」と求める声も上がった。

 また、約50人が駆けつけた気高町でも、批判の声が多く、会派「新」の上杉栄一議員が「当時は、合併特例債の適用期限が迫るなか、具体的な議論ができないまま住民投票に突っ走ってしまった。反省しなければならないことも多い」と陳謝した。

 議員たちは、説明内容を統一しようと、事前に勉強会を開き、会場では資料をスクリーンに映しながら説明。しかし、市民とのやりとりが過熱すると、それぞれが個人的な意見を述べる場面もあった。

 国府町では、「新」の有松数紀議員が「今でも新築移転が正しいと思っている」と発言。気高町では、「新築移転はないという姿勢で臨むのか」と聞かれ、「結(ゆい)」の橋尾泰博議員が「いま新築移転の議論はしていない」と回答。しかし、公明党の桑田達也議員は「住民投票では新築移転にも3万人以上の市民が同意している」と述べ、立場の違いが鮮明になった。

 3日は午前9時から市国際交流プラザと河原町中央公民館、午後1時半からさざんか会館で開かれる。

2013年2月1日金曜日

徳島・移動販売


「買い物難民」と商店をつなぐ移動スーパー「とくし丸」が徳島にお目見えして間もなく1年。買い手に「1品10円」の価格上乗せをしてもらうことで、当初の赤字はぐっと減った。販売車は5台に増え、徳島の試みは県外にも波及。新たなビジネスモデルが着実に育っている。

 11月中旬から走り始めたとくし丸5号車のドライバーは渡辺浩高さん(34)。徳島市国府町と名東町の3ルート(計約150軒)を受け持つ。早朝、提携先のスーパーで総菜や菓子、飲み物、生活雑貨など約300種類を積み込み、出発する。 

 特徴はルートの細かさ。200メートルほどしか離れていない場所でも停車する。渡辺さんは「広場のような場所にとめるのではなく大半は一軒一軒出向く。足が不自由な人もいるし、音楽を流しても冬は窓を閉めていたら聞こえない人も多い」と話す。1日30~35カ所回り、1カ所にかけるのは移動も含めて10分程度だ。 

 農林水産政策研究所によると、生鮮品販売店まで500メートル以上あり、車のない「買い物難民」は全国で910万人。県内の買い物難民は人口の9・2%の7万5千人でうち65歳以上は3万5千人と推計される。需要の対象人数を考えると、「すぐにでも10号車ぐらいまで走らせられると思っていた」ととくし丸社長の住友達也さん(55)。だが、道は平らではなかった。 

 「買い物難民と言っても、すごく困っている人も、ちょっと困っている人もいる」。おやつ一つ買う人もいれば、2、3日分の食料を買う人もいる。「ちょっと困っている人」をいくら開拓しても、売り上げ増にはつながらない。事業を始めた2月以降、本体のとくし丸は赤字が続いた。 

 そこで、「困っている人」をどう把握するか、知恵を絞った。各ルートの戸別訪問を徹底し、加えて導入したのが「+10円ルール」。買い手に1品につき10円上乗せして支払ってもらう。50円の商品は60円、500円は510円。2品なら20円の上乗せになる。 

 「買い手には負担だが、本当に困っている人はとくし丸を支えるために払ってくれる」。1台当たりの平均販売点数は1日200~250点。1日2千~2500円の利益が上乗せされ、販売担当ととくし丸が折半する仕組みが確立され、とくし丸の赤字幅はぐっと圧縮された。80代の女性は「タクシーで買い物に行くことを考えたら、50円や100円は安い。それより来てもらえなくなるほうが困る」と話す。 

 今、古株の販売車の売り上げは1日の目標6万円を超え、8万円台になることもある。3月には新たに6号車を走らせる予定だ。住友さんは「10台が走れば、赤字脱却が可能になる。今年は勝負の年」という。 

 次のとくし丸の課題は知名度。住友さんは「行政に補助金は求めない。ただ、地域をとくし丸が走っていることを知らせてほしい」。行政の広報がお年寄りの「安心感」につながるとみる。 

 始めたばかりの頃、徳島市内の独居の女性宅を訪問したが、2回続けて留守だった。たまったままの新聞受けを不審に思い民生委員に連絡すると、女性は亡くなっていたという。「早く見つけてもらってありがたいと感謝されたけれど、もし前回のぞいていれば、とも思った」と住友さん。 

 経済産業省の「買い物弱者応援マニュアル」には、各地の取り組みとして、行政や民生委員と協定を結び、高齢者の安否確認に役立てる例が紹介されている。販売だけでなく、高齢者宅を定期的に回り、地域コミュニティーを再生する役割もある――。そんなとくし丸を住友さんは「地域の見守り役でもある」と自負する。