2013年11月14日木曜日

バイオマス発電所・鳥取県


中海に面した埋め立て地の境港市西工業団地。ここに本社をおく住宅建材の合板メーカー「日新」が、木質チップを燃料とするバイオマス発電所の建設を進めている。稼働開始は、2015年4月。発電規模は5700キロワットで、稼働に必要な分を除く全てを売電し、年間10億円の収入を見込む。

 安い外国産材の輸入増などで、国内では手入れされずに荒廃した山林が増えている。「山に放置された木をチップにしてバイオマス発電に活用すれば、山の整備につながる」と、日新の藤原義史・総務部長は意義を語る。自然エネルギーの固定価格買い取り制度を利用すれば、間伐材などを買い取っても採算がとれ、合板の製造工程で出る大量の端材も、木質チップとして有効活用できるとの考えだ。

 課題は燃料の安定確保。発電所の稼働には年間8万トンのチップが必要になる。そこで5月、県が中心となり、森林組合やチップ加工業者など11者から成る協議会が発足。森林組合が切り出す間伐材などで4万トン、日新から出る端材で4万トンの目標を設定した。

 再生可能エネルギーの導入を推進する県も、新たな取り組みに期待を込める。県の県産材・林産振興課の大石幸司・農林技師は「間伐材など低質材の需要があれば、無駄になっていた資源を活用できる。さらに林業と木材産業に雇用と仕事が生まれ、山の活性化にもつながる」。日新は発電事業のための子会社を設立し、来春に12人を新規雇用する予定だ。

 県によると、県内では年間80万立方メートルの木が成長しているが、そのうち消費量は4分の1の20万立方メートルにとどまる。県は、県東部でも木質バイオマス発電施設の事業化を支援している。

 すでに大規模なバイオマス発電を行っている工場もある。米子市と日吉津村の間を流れる日野川沿いで1952年に操業開始した王子製紙米子工場(米子市吉岡)。24時間稼働し、1日に約1500トンの紙を製造している。

 「製紙工場は発電所です」と、同工場の前田英典・事務部長。54万5千平方メートルの敷地には、発電のためのボイラーや蒸気タービンが備えられ、最大で一般家庭約4万世帯分に相当する11万9400キロワットの発電能力がある。日中は8万キロワット前後を発電し、工場内で使用する電力をほぼ全てまかなう。余った電力は売電もしている。

 燃料は、パルプを生産する工程で出る樹液が主成分の黒液。98年に稼働を始めた木質バイオマスボイラーで蒸気を発生させ、タービンで発電する。2005年には、再生紙にできない紙とプラスチックを固めた燃料(RPF)や廃タイヤなどを燃やす発電用ボイラーもできた。

 王子ホールディングスは発電事業に力を入れており、静岡県など国内3工場でバイオマス発電設備の新設を決めている。その理由を、王子製紙米子工場の早瀬祐一・施設副部長は「製紙会社は昔から発電してきた経験があり、紙の原料とするため広大な社有林も持つ。電力売買の法整備など、ノウハウを生かせる環境が整ってきた」と話す。