2013年12月10日火曜日

横浜市、待機児童数231人


今年4月1日時点で認可保育所の「待機児童ゼロ」を達成した横浜市で、10月1日現在の待機児童数が231人に増えた。市が10日、発表した。「ゼロ」を発表したのが呼び水となり、子どもを預けて働く人や、転入してくる人が増えたという。

 年度途中の待機児童は、全国的に4月より増える傾向にある。厚生労働省によると、昨年10月は4万6127人と、昨年4月の1・8倍に増えた。新年度の入所申し込みの締め切り後に生まれる子どもがいるのはもちろん、年度途中に親の育児休業が終わるケースや、離婚や病気、介護などで急に働きに出たり、子どもを預ける必要が生じたりするケースもあるためだ。

 横浜市では「ゼロ」を発表した5月以降、「預けられるなら」と働きに出るケースや、市外や県外からの転入も増えた。その結果、10月1日時点の申込数は5万2589人。前年同期より3794人増えた。認可を希望しながら認可外の保育所に入ったり、保護者が育児休業を延長したりした「潜在的な待機児童」も3551人に上った。

 市は今年度、当初は定員を1525人増やす計画だったが、想定以上の申し込みで急きょ2300人にした。開園時期の前倒しを検討する保育所も4カ所あり、林文子市長は「2600人分を確保できる見通し」としている。一方で、来年4月1日時点の申込者は今年より3千数百人増える見込みで、再び「ゼロ」になるかは不透明だ。

 林市長は10日、「申込者が増えている傾向は、より多くの女性が子育てしながら活躍しようと一歩を踏み出したことの表れで、心強く思う。来年4月に向けて、より一層気を引き締めて取り組んでいく」とのコメントを出した。

■「ゼロって聞いて引っ越したのに」

 【木下こゆる、岡田慶子】10月1日現在の認可保育所の待機児童数が231人となった横浜市。4月1日現在で「ゼロ」を達成したと発表し、全国的に注目を集めた5月以降、保育所への入所申し込みが殺到している。

 「ゼロって聞いたから横浜市に引っ越した。職場に復帰する気でいたけど、甘かった」。横浜市中区の会社員女性(40)はため息交じりに話す。

 長女が昨年10月に生まれ、育児休業中は夫(40)の転勤に伴って新潟市で過ごした。1歳となり、今年12月から働こうと考えた。職場のある東京都大田区や、夫の実家のある神奈川県藤沢市を選ぶこともできたが、「待機児童ゼロ」と聞いて、ためらわずに横浜へ。夫は新潟のまま長女と10月に引っ越し、11月からの入所を目指して、6カ所の認可保育所に希望を出した。

 ところが、結果はどれも「入所不承諾」。認可外ながら市独自の基準を満たした「横浜保育室」も、通える範囲にあるところは全てキャンセル待ちだった。

 仕方なく育休を3月末まで延ばした。それでも入れなかったら退職せざるをえないと思う。「ゼロといっても年度途中は入れない。入所しやすい4月に復帰の時期を合わせなければいけない状況は変わらない」

 神奈川区の塩田洋司・こども家庭支援課長によると、「横浜に引っ越せば絶対に入れるのか」「預かってもらえるなら働きたい」という問い合わせが増えた。「入れると聞いて引っ越してきたのに、なぜ入れないのか」という人も。その都度、市のホームページで空き状況を見るよう案内しているが、枠の狭さに落胆する人は少なくない。

 「いつでも入れる状況を続けなければ、待機児童ゼロとは言えないのでは」。市内2カ所の認可保育所の理事長で、「神奈川県保育問題協議会」会長の辻村久江さんはそう投げかける。

 年間を通じて「ゼロ」を続けるには常に「空き」をつくる必要がある。だが横浜市の認可保育所の入所率は4月時点で100・5%に達する。一方で認可外の「横浜保育室」は75・1%。専ら認可外が年度途中の受け皿になっている。

 認可外にとっては、その「空き」が重い負担になっている。横浜保育室の運営費は、利用料と市からの助成金で成り立っているが、助成金の額は定員ではなく、通っている子どもの人数に応じて決まる。自宅などで少人数を預かる市の家庭保育福祉員(保育ママ)制度も同様だ。

 「横浜保育室・無認可保育所連絡協議会」の灰谷薫副会長は「園は定員に合わせて職員を確保するのに、園児の数で補助金が決まる。経営が不安定になれば職員の定着も悪くなり、結果的に保護者との信頼関係や保育の質に影響が出る」と指摘する。