2013年4月11日木曜日

「ふくおか子育てマイスター」


核家族化や女性の就労が進み、より地域のサポートが求められる子育ての場で高齢者が活躍している。担い手になってもらおうと、60歳以上を対象に県が2012年度から始めた「ふくおか子育てマイスター」の研修を多くの人が希望するなど、意欲も高い。

 50平方メートルほどの室内で、生後9カ月から4歳の5人が、おもちゃで遊んだり、弁当を食べたりしていた。

 筑紫野市シルバー人材センターが運営する託児施設「シルバーほほえみ」。子どもの世話をしていたのは3人の女性で、壁には知事名のマイスター認定書10人分がはられていた。

 原則、平日の午前9時から午後4時まで、生後3カ月ぐらいから就学前の乳幼児を一時的に預かる場だ。ひとり1時間で550円。利用に理由や条件は求めず、通院や買い物、きょうだいの学校の用事など、その日の都合で事前に予約して自由に使える。

 昨年7月にセンターに会員登録した日野ゆり子さん(63)は、自分の子がまだ小さい時から働き「十分に育児に関われなかった」との思いから、この仕事を選んだ。2カ月後には、第1期のマイスター研修を受講。「発達段階に合わせた子育てが学べ、勉強になった。子どもが成長していく姿を間近で見られるのはうれしいですね」と話す。

 この施設がオープンしたのは05年9月。センターでは、従事する会員に育児ヘルパーの講習を課しているが、より安心して預けてもらえるようにと昨年9月から始まった県の制度も利用することにした。

 マイスターの認定には、「健康と安全」「コミュニケーションの方法」など全7日・30時間の受講が必要だ。2月に福岡市であった第2期の研修会には、定員の50人を上回る83人の申し込みがあり、抽選で55人に絞った。ある日の講義では、やけどや誤飲・誤嚥(ごえん)、食物アレルギーへの対処法などを学び、救急車の呼び方を練習していた。

 県子育て支援課によると、マイスター認定者は3月末で277人。すでに公民館など地域で子育てボランティアをしている人が多く、今の親の姿や育児の現状を知って「世代間ギャップ」を埋め、子育て世代を支えたいという熱心な参加者が目立つという。

 高齢者に特化した、こうした制度は都道府県レベルでは初めてと同課。14年度までの3カ年事業で、計1200人のマイスターを誕生させる方針だ。