2013年4月4日木曜日

女性の起業を支援


長崎で茶の貿易商として成功し、幕末の志士を支えたとされる大浦お慶(1828~84年)。女性実業家の先駆けだったお慶に続けと、県が起業をめざす女性を支援する「大浦お慶プロジェクト」を始めた。経済再生に女性の力が求められる今、事業を本格化させている。

■幕末、ビジネスウーマンの先駆け

 先月14日、長崎市立図書館のホールでキャリアフェスティバルがあった。趣味を仕事に変える方法や起業の計画づくりを助言するセミナー、県や日本政策金融公庫による相談受け付け、起業した女性の出店ブース。女性たちがあふれた。

 アパレル店員を辞め、夏からカナダに語学留学するという長崎市の女性(32)は、帰国後の仕事について考えたいと今回訪れた。「長崎で女性が成功するのは難しい。男性社会の雰囲気が残っている」と話す。

 セミナーに参加した峰松弘子さん(55)は3年前に小学校教員を辞め、障害や病気がある人の就労を支援する団体を昨年1月に立ち上げた。「大きな看板のない私が再出発するには支援してくれる人が必要です」

 イベントを主催したのは、女性がビジネスの情報交換をする会「B塾」(長崎市)。3年前に活動を始めた。昨年6月、大浦お慶プロジェクトの第1弾として、女性の力で地域を活性化する企画の募集に応じて採用され、県から100万円の助成を受けた。

 B塾の小山真結美会長(42)は「県にチャンスをもらった。現場の活動が軌道に乗るまで、長い目で見守ってほしい」と話す。

 大浦お慶プロジェクトは2010年、県内で活躍する10人の女性「お慶メンバー」の会議から始まった。メンバーはコピーライター、タクシー会社役員、スーパー経営、旅館女将(おかみ)ら。会議で出た提案を、県が昨年度から事業化している。

 今年1月、中小企業診断士が起業の助言をする事業を始めた。4月3日現在で、美容、高齢者や障害者支援などの起業を目指す女性32人から依頼があった。

 3月には、プロジェクトのホームページ(http://www.okei-net.jp/)を立ち上げ、会員登録(無料)をすればお慶メンバーにメールで質問できる窓口、起業や再就職、資格取得や子育て支援など働くために必要な機関の案内を載せた。

 今夏には女子大学生が将来の職業や働き方を考える事業を計画中だ。県内で活躍する色々な職種の女性を取材し、交流してもらう。

 県男女共同参画室の森玲子室長は「地域経済を元気にするには、働きたいのに働けていない女性の活用が不可欠。女性が外に打って出られるよう、県でサポートしたい」と話している。

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 〈大浦お慶〉(1828~84) 江戸時代末期に長崎の油問屋「大浦屋」に生まれ、佐賀・嬉野などの茶の貿易で富を築き、坂本龍馬らを経済的に支援した。亡くなる直前には茶の輸出の功績が認められ、明治政府から褒賞を与えられた。