2013年3月7日木曜日

「希望の大槌 逆境から発想する町」出版


岩手県大槌町の碇川豊町長は、11日の震災2年に合わせ、「希望の大槌 逆境から発想する町」(明石書店、260ページ・1600円)を出版した。町づくりのアイデアを披露しつつ、復興に向け、大槌町の抱える課題は、日本全体の課題を先取りしていると指摘するとともに、前立腺がんとの闘病も告白している。

 11章立て。苦学した少年時代を経て役場に入り、選挙を経て町長に当選するまでを振り返りつつ、町長として、住民主体のまちづくりや、復興に向けた制度の壁を指摘する一方で、震災を逆手に取った持論を、具体例を示して展開する。

 「今こそ起業のチャンスだ。壊す必要はなく、建てるだけでいい。震災前はとてももらえなかった手厚い支援もある。『大槌』の名は世界中に知れ渡っている」(6章)、「今の大槌町は、(日本の)人口減少と高齢化を『先取り』した状態。将来に備えて様々な『実験』をするには絶好の場」(9章)などだ。

 そして、最終の11章では、「前立腺癌(がん)との戦い」として、2000年にがんと診断され、転移が疑われながら放射線治療をした後、今も経過観察中であることを赤裸々に語っている。

 そのうえで「痛みが伴わないように延命措置をして、残った町民の『余生』を幸せに過ごすことを重視するのか、それとも徹底的に戦って、痛みとつきあいながら新しい町をつくるのか」などと、町の将来と自分を重ね合わせている。

 碇川町長は「生きる力そのものが免疫力だと思う。町民もあきらめないで、でも、無理しないで、一緒に歩こう」と話している。

 印税はすべて、本にして町外の支援者らに配ったり、震災犠牲者の供養に使ったりするという。