2012年8月3日金曜日

圏央道の高尾山トンネル。データ正確でなくても「事業認定は適法」

東京都八王子市を南北に通る圏央道の高尾山トンネルなどの区間について、住民や自然保護団体が国の事業認定の取り消しなどを求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁(芝田俊文裁判長)は7月19日、住民側の控訴を棄却した。「事業認定は適法」として住民側の請求を棄却した一審・東京地裁判決を支持した。

 一方で高裁判決は、「自然環境の破壊に対する配慮が足りない面がある」とも言及。高尾山周辺の圏央道をめぐる一連の訴訟で初めて、高尾山への環境被害について明確に認めた。

 裁判で住民側は、工事が高尾山の自然環境や景観を破壊するほか、渋滞解消などのメリットは少なく、国による費用対効果の計算は誤っていると訴えてきた。

高裁判決は、「事業によって得られる利益と失われる利益を比べるのは難しく、国に広い裁量権がある」と述べた上で、国の判断には一定の合理性があったと結論づけた。ただ、費用対効果の計算については「正確性に疑問が残る。分析の元となったデータを保存しない国の態度は改められるべきだ」と非難した。 

 圏央道は、横浜市と千葉県木更津市を環状に結ぶ高速道路で、総延長約300キロの建設に既に2兆円を超える事業費が投入された。完成したのは3分の1で、訴訟の対象となった区間は、今年3月に開通した。 

 多摩地区の圏央道をめぐっては四つの訴訟が起こされ、うち三つで住民側の敗訴が確定。この訴訟が唯一、残っている。住民側は今後、上告するか検討するものの、上告は憲法違反などの理由に限られるため、「今回で一連の訴訟が事実上終結した」としている。弁護団は今回の判決を「国の主張が批判され、これまでの活動の成果をある程度反映できた」と評価した。