2012年10月31日水曜日

市長選、ゾウが争点



11月4日告示の愛知県豊橋市長選で、市営動物園のアジアゾウの飼育のあり方が争点に浮上している。ゾウを増やす「群れ飼育」計画を掲げた現職に対し、新顔は「費用負担が大きい」と現状維持を主張。市民からは「市民生活にかかわる問題を議論して」との声も出ている。

 市長選には、再選をめざす現職の佐原光一氏(58)と、新顔で元衆院議員の杉田元司氏(61)が立候補の意向を表明している。

 27日の公開討論会。東京事務所の存廃や給食費無料化なども議論になったが、対立が最も際立ったのがゾウの問題だった。

 杉田氏が「夢はあるが、現実の財政力を考えると不明点が多い。防災など市民の命を守ることが最優先ではないか」とかみつくと、佐原氏は「全国から注目される」と反論。熱のこもったやりとりが4回続いた。

 きっかけは昨年9月、市営豊橋総合動植物公園でアジアゾウの「マーラ」が誕生したこと。国内4例目の出産とあって、佐原氏は自ら記者会見を開き「世界中のゾウファンに良いニュースだ」と喜びをあらわにした。

 誕生に先立つ昨年7月には、佐原氏らはゾウを集団飼育するドイツ・ケルン市の動物園を視察。今年2月、現在3頭のゾウを約10頭に増やし、2ヘクタールのエリアで放し飼いにして自然繁殖をめざす「群れ飼育」計画を市議会に打診した。ゾウの群れ飼育は、国内では例がないという。

 豊橋市は人口約38万人の中核市で、県内4番目の規模を誇るが、観光施設は乏しい。

 それだけに市の総合計画では、総合動植物公園への集客を「とよはしイメージアップ大作戦展開プロジェクト」と位置づけ、10年間で46億円を投入。うちゾウエリアの整備に約25億円かけると説明する。佐原氏は3月市議会でこう強調した。「子どもたちが、群れで暮らすアジアゾウの実態を学習できる。数十億円に代わる幸せを提供できる」

 ゾウをめぐり白熱する議論。喫茶店経営の女性(62)は「年金暮らしでコーヒー1杯飲みに来るのに週1回が精いっぱいの人もいる。もっと深刻な、暮らしの問題を話し合ってほしい」と話した。