2012年3月16日金曜日

西日本に運ぶのは間違い

ここにきて瓦礫処理をうけいれようとする自治体が現れてきていますが、朝日新聞でこんな記事が出ていました。

山内知也さん=神戸大学大学院教授
すでに放射性物質が拡散してしまった東日本と、幸いにも汚染されなかった西日本では、区別して考える必要があります。
東京では、岩手と宮城のがれきを受け入れた後も、焼却灰の汚染濃度にあまり変化はありません。これは、東京のごみが被災がれきと同じくらい汚染されているためです。千葉や群馬、茨城などが仮に受け入れても結果は同じでしょう。
こうした汚染地域では、がれきの受け入れ問題より、身の回りからの被曝(ひばく)を減らすための除染が大切です。私が東京都の公園で空間線量を調べたところ、地表から1メートルの空間放射線量が毎時0.9マイクロシーベルト検出された。局所的な汚染場所を見つけ、除染すべきです。
西日本では、大阪府が受け入れを検討しているが、わざわざ放射性物質を運んでくるのは間違いです。日本の将来を考えたとき、被曝する人を1人でも減らし、汚染されていない土地を残すのは重要だと考えます。
がれきについた放射性物質が微量だとしても燃やすことで濃縮され、汚染灰が出ます。排ガスによる拡散も不安です。焼却施設にはダイオキシン対策のために付けたフィルターがあり、排ガス中の放射性物質をほぼ100%除去できるから、大気中への放出は心配しなくていい、と国は説明します。排ガスの放射性物質濃度が「不検出」との結果も発表されています。
しかし、不検出なのは計測時間が短すぎるためです。仮に、国が言うように99.9%以上除去したとしても、完全に放出をとめているわけではない。濃度が小さくても焼却炉のガス排気量は大きいため、相当量の放射性物質が流出する恐れがあります。周辺住民が受ける放射線量は低いかもしれないが、汚染が広がります。
がれき処理の遅れが、一部の被災地で復興の妨げとなっているのは確かです。仮置き場が満杯のため、半壊家屋が街に残ったままの地域もある。しかし、家屋解体も進み、仮置き場への搬入がほぼ終わった自治体も多い。街づくりを同時に進めることはできるはずです。
そもそも、がれき処理が遅れているのは、広域処理が進まないことが原因ではない。広域処理の予定量は全体の約2割にあたる401万トンに過ぎません。最大の原因は、被災地でのがれき処理の体制整備に時間がかかっていることでしょう。
解決のためには、被災地で高性能なフィルターが付いた大型焼却施設の建設を増やすべきです。大きなお金が落ち、雇用も期待できます。発電装置を備えた焼却施設をつくれば、がれき処理を終えた後も、森林の間伐材を使った木質バイオマス発電として活用できます。安全対策を徹底し、復興につながるかたちで処理を進めるべきです。(聞き手・岩井建樹)

参考 山内知也さんの申し入れ書
2011年4月21日
児童・生徒の被ばく限度についての
申 入 書
文部科学省学校健康教育科 電話 03-6734-2695/FAX03-6734-3794
原子力安全委員会事務局  電話 03-3581-9948/FAX03-3581-9837

山内知也 神戸大学大学院海事科学研究科 教授

 大学で放射線を教授している者として申し入れます。

 福島第一原発事故への対応に関して、福島県内の児童と生徒の被ばく限度を年間20ミリシーベルトにされておりますが、子供が浴びる線量としては不当に高いものです。撤回して年1ミリシーベルトの基準を児童と生徒には適用してください。

 既に半減期が30年であるセシウム-137が全体の被ばく線量を支配する段階にはいっており、これからは被ばく線量は数年の単位ではほとんど低下しなくなります。したがって年20ミリシーベルト相当の被ばくが何年も継続することになります。

 ICRP(国際放射線防護委員会)が過去にまとめた報告類でも(ICRP-publiction36)、生徒の被ばくを禁じており、18歳未満の生徒については放射線を使った実験を意図的に行う場合でも年間の被ばく限度を公衆の被ばく限度の10分の1にするように勧告しています。
 
 それは子供の放射線感受性が大人よりも高く、被ばくの影響が出る期間も長いからです。

 ICRPが3月21日に公表した見解(ICRP ref: 487-5603-4313)でも『放射線源が制御下におかれた時には汚染された地域が残るだろう。その地域を捨てるのではなくて、そこに住み続けることを人々に許可するために必要となるあらゆる防護手段を提供することが場合によっては出てくるだろう。この場合について委員会は、参考レベルとして、長期的な目標としての参考レベルは一年あたり1 mSvに低減させるとしながらも、年間1mSvから20mSvの範囲の中から選択することを勧告する』。(ICRP 2009b 48から50節)。

“When the radiation source is under control contaminated areas may remain. Authorities will often implement all necessary protective measures to allow people to continue to live there rather than abandoning these areas. In this case the Commission continues to recommend choosing reference levels in the band of 1 to 20 mSv per year, with the long-term goal of reducing reference levels to 1 mSv per year (ICRP 2009b, paragraphs 48-50).”

とあります。

 子供の被ばく限度を20ミリシーベルトでよいとはしていません。ここではあくまで1ミリシーベルトを目標としています。1から20までの範囲であれば、子供に対しては1ミリシーベルトを選択すべきです。早急に見直して下さい。

 このままでは疫学調査に出てくるような実際の被害が福島の子どもたちの間に生じます。
以上