2011年10月27日木曜日

イオンの「ネットスーパー」青森全県宅配へ

朝日新聞です。
 インターネットで注文を受け、商品を宅配する「ネットスーパー」を手がけるイオンが来春、各店舗の5~10キロ圏に限っている現状の宅配地域を東北6県で全域に広げる。採算は合うのか。過疎地の「買い物難民」の朗報になるのか。
■どんなに遠くても
 10月中旬、青森市のイオン青森店。売り場近くの倉庫の一角で、店員2人が生鮮食品や日用品を配送先ごとに箱詰めしていた。パソコンに注文が届くと、店員が直接、売り場の棚の8千品目から商品を取りに行く。イオンリテール東北カンパニー総務部の鈴木茂伸マネジャーは「いわば買い物代行業」と話す。
 配送料105円(キャンペーンで3千円以上の注文時無料)を除けば商品価格は来店客と同じ。夕飯時が忙しい子育て主婦を中心に生鮮食品が人気で、同店では1日数百件の利用がある。一度の平均購買額が来店客の約2倍の3千円を超えるのが特徴で、将来は売り上げの柱にしたいという。

 イオンは、東北6県で先行して11月中旬から「青森全県宅配」を始める。大半の地域が青森店から配送される予定で、片道150キロある本州最北端の大間町なども含めて、「どんなに遠くても1軒だけでも注文は断りません」と鈴木マネジャー。利用が現状の5倍になれば、遠距離の配送があっても利益は出ると見る。配送を委託された運送会社のドライバーが、イオンの制服を着て回る。このため、イオン側の人員を増やす必要はないという。

■「買い物難民」も視野
 今後は、過疎地のお年寄りら自宅近くに商店がない「買い物難民」の利用増も視野にある。鈴木マネジャーは「食材を一人暮らしのお年寄り用に小分けするなど、新たな売り方が必要になる」とみる。カタログを見て電話やファクスで注文する方式にも力を入れる。

 地域生活を支える流通に詳しい上原征彦・明治大教授は「買い物難民対策でNPOなどが移動販売に取り組む例もあるが、採算性が最大の課題。ネットスーパーは解決策になり得る」と期待する。

 一方、「買物難民―もうひとつの高齢者問題」(大月書店)を著した帯広畜産大学の杉田聡教授(哲学・社会学)は「低所得層向けに配送料をより安くし、カタログを見やすくするなど、高齢者への配慮が必要だ」と指摘し、「お年寄りは実際に商品を見て、献立を考える。本気で買い物難民対策を考えるなら、移動販売に力を入れるべきだ」